Point
- 文科省は今年度中に児童生徒に1人1台端末を整備せよと言っています
- 各市区町村の教育委員会は最適なOSを選択する必要があります
- オススメはズバリ「Apple iPad」です
今回は児童生徒のために整備する端末についてまとめます。
なので、「GIGAスクール構想」や「教育情報セキュリティ」といった話は置いておきます。
※前のブログと文科省の概要ページを見ていただくとわかりやすいと思いますよ。
そこで、行政の情報系職員ではありますが、教育系のことを頻繁に相談される自治体職員の立場として、
この三者のどのOSがよいのか比較・検討していきたいと思います。
- iPadOS(Apple;iPad)
- Windows10(Microsoft)
- ChromeOS(Google;Chromebook)
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文科省の補助金について
比較に入る前に、今回の文科省の「1人1台端末」整備事業に対する補助金について、
整理しておいた方がいいと思います。
1台4.5万円の補助金を出すと言われていますが、実際の対象はどこまでなのでしょうか。
ここでは文科省のQ&Aから回答を提示したいと思います。
- 無料の1~複数年の保証契約も含めた端末の価格(補償等の費用も含む)のほか、機器の運搬搬入費、設置・据え付け費用が対象となります。また、すでに1人1台環境が整備されている場合は、令和5年度までの端末の更新についても、対象となります。
- キーボードについては、「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」のとおり必須としており、タブレット型の場合でも、ハードウェアキーボードを補助対象としています。
- タッチパネル対応とQRコード読み取り機能については、「GIGAスクール構想の実現標準仕様書」のとおりモデル例として示していますが、学習活動の例示として、デジタル教科書や教材の活用、教科書に掲載されているQRコードを読み取る際などに機能が必要となることが想定されることから、機能を有していることを推奨します。
- 端末管理(MDM)ツールを学習用コンピュータの必要な機能とし、「学習者用コンピュータ」として調達する場合は、補助の対象とします。(学習者用コンピュータと別個に調達する場合のように、単品(有償)として扱われるものは補助の対象外となります。)
- 端末費が補助額を超える場合、その差額は自治体負担となります。
4.5万円を超えた分は各自治体の負担となります。
自治体ごとに予算を組む必要がありますが、4.5万円を超える場合は議会でそれなりに説明が必要になるでしょう。
しかし、パソコンやスマホをろくに使えない議員さんたちにその価値がわかるとは思えません。
ということは、端末1台の値段は基本的に4.5万円以内におさえる必要があるんです。
ちなみに、文科省ではこのようなモデルも出していますので参考にしてください。
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比較してみた
3つのOSを比較してみた結果が下の表です。(前提:4.5万円で購入可能な端末)
断っておきますが、わたしは全ての端末を個人的に所有しており、
所有歴も3つとも8年以上なので、いい加減な表ではないことを保証させていただきます。
価格 | 動作 | 周辺機器 | 操作性 | セキュリティ | サポート | 管理 | |
iPad (タブレット) | ◯ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
Windows (パソコンまたはタブレット) | ◎ | ✕ | ◎ | △ | △ | ◯ | ◯ |
Chromebook (パソコン) | ◎ | ◯ | △ | ◯ | ◎ | ◎ | △ |
それぞれ「◎(非常によい)」「◯(普通)」「△(微妙)」「✕(悪い)」で評価させていただきました。
詳しく見ていきたいと思います。
価格
WindowsやChromebookについては、安さが売りというところもあるので「◎」としました。
それに教育用「Microsoft 365」や「G Suite」が無料で利用できるメリットもあります。
一方iPadですが、おそらく価格面で外している自体対もあるのではないでしょうか。
実は、iPad(第7世代)(税込36,080円)とライトニングの有線接続キーボード(税込6,090円)に数千円のカバー等を追加してもなんとか4.5万円で抑えることができるんです。
動作
5万円以下のWindows端末を購入したことはありますか。
CPUは、CeleronかCore i3くらいでしょうか。遅いですよね。
端末の買い替えは5年と言われています。
ただでさえ動作の遅い端末が、5年するうちに経年劣化していけば、余計動作が遅くなります。
授業中に固まったり、遅すぎて先に進めないなどの問題が一番起こりそうなのがWindowsです。
わたしにとって、ここでWindowsを選択する理由は完全になくなりました。
周辺機器
Chromebookはそれほど周辺機器の品揃えはよくありません。
それに比べて、iPadやWindows製品は商品が豊富ですね。
操作性
iPadの良さは、直感で操作できるところだと思います。
画面に並ぶ使いたいアプリをタッチするだけですぐにやりたいことができます。
Chromebookもそれなりに操作は簡単ですが、デスクトップにファイルやアプリを置けないため、
iPadよりは何手間か余計な操作が必要です。
Windowsは一番普及していて操作が簡単に思えるかもしれませんが、
おそらく初見であろう児童生徒には色々できすぎてわかりにくいと設計だと思います。
設定画面なんて非常にわかりにくいですよね。
セキュリティ
iPadは、インストールできるアプリをApp Storeでしっかり管理していますし、アプリごとにアクセス権限も管理できますので、基本的にウイルス対策ソフトは不要であると言われています。
Chrome OSは、以下のページにもある通り対策が必要ありません。
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Windowsは、ネットから様々なアプリケーションをインストールできてしまいますし、一番普及している分一番驚異を受けやすいため、様々な対策が必要です。
サポート
ChromeOSのよいところは、自動でOSが更新されることです。
容量も軽いため、アップデート自体もWindowsのように長時間かかうということはなく、あっという間に再起動して完了です。
購入から3年間しか更新できないという縛りもありましたが、
最近の端末は8年ほどの更新サポートをしているものもあるので安心ですね。
WindowsとiPadも長期間保証されていますが、ChromeOSのようなメリットはありません。
管理
管理面で最も優勢なのはWindowsだと思います。
日々サーバも運用管理するわたしからすると、使い慣れたものなのでわかりやすいという理由があります。
しかし、AppleやGoogleもアカウント作成や端末管理が簡単になるようなソリューションもあるようです。
正直、この分野についてはまだ触ったことがないので未知数ですが、
職員も業者もこれから苦労するであろうことが予想されますので、
ChromebookとiPad については「△」とさせていただきました。
iPadは、Apple School Managerとモバイルデバイス管理(MDM)ソリューションがあるようですが、
結局Microsoft Azure Active Directoryで認証する必要があり、
その辺がどのような使い勝手・価格になってくるのかも不安なところですね。
また、自治体内の保守業者がChromeOSやiPadOSを保守対象にしていないことも想定されます。
業者さんはこの機会にWindows以外も保守できれば新たな道を開拓できるでしょう。
結局どれなの?
比較の結果として、わたしはiPadをオススメさせていただきます。
軽い動作や直感的な操作性はApple製品の強みだと思います。
他の端末と比べて圧倒的に不具合が少ないのも大きなメリットです。(若干印象も入っていますが。)
iPadを選択肢から排除している自治体は、再考してもいいのではないでしょうか。
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まとめ
わたしはiPadをおすすめさせていただきますが、
都道府県の一括調達で自由選択できなかったり、
近隣市町村と足並みを合わせて同一端末を導入する場合もあるようです。
それぞれ一長一短ありますが、児童生徒が快適に利用できる端末を責任もって選択しましょう。
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コメント
コメント一覧
通りすがりの公務員様、貴重なご意見ありがとうございます。
管理する立場からすると一部同意しますが、子どもたち視点においては「使いやすさ」が一番大切だと思います。ケース必須でもWindowsノートやChromebookよりはかさばりませんし、ブラウザベースのアプリも多いのでピュアタブレットかどうかは重要でないと思います。むしろだからこそ直感で使いやすいiPadを推します。ビジネスでiPadを使うかどうかは今回の話と少し離れた議論だと思います。
はい、子どものためが一番大切です。
故意なく壊してしまったときの子どもの精神的なダメージを与えないために壊れやすい端末は避けます。
子どもの未来のために教育環境のあり方をいつも考えます。iPad大好きで2台持ってますがアウトプットはラップトップです。文科省標準仕様含め5OS持ってます。PISAで子どものICT用途でゲームやチャットが世界トップ、学習用途が最下位で愕然としました。消費の道具としてしか使えていません。
ビジネスユースは大切だとおもいます、未来を想像する責任が子どもの教育環境をつくる大人にはあります。
iPadを勧める大人は皆MacBookなどラップトップで作業しています。インプットアウトプットの生産性の差を知っているからです。
子ども扱いして子どもにとって使いやすいという妄信で可能性を閉ざしては行けないと考えてます。小学生でもラップトップで素敵なレポートやプレゼンテーション、ビデオなどつくってきますよ。
私は子どもだからと鍵盤数の少ない子ども用ピアノにはしません。彼らが大人と同じ道具を使うことに誇らしく感じて、素晴らしい演奏をする可能性があると信じているからです。
iPad=壊れやすい、という固定概念だと思いますよ。画面を覆えるケースをすればよいですし、それでもラップトップより嵩張りません。
小中学校でiPadだったとして、それをいつまでも使い続けるとは思っていません。社会に出ていくまでにWindowsやChromeOSに触れる機会だって排除していません。
妄信と言われますが、子供だけでなく、大人にもわかりやすいのがiPadです。できるだけ多くの子供達が理解できる・授業についていけるようにするには、当然わかりやすい設計のOSを選ぶべきだと思います。アプリはブラウザベースのクラウドサービスが多いですし、iPadOS対応のアプリも存在します。ですからラップトップに固執しなくてもよいと思います。おっしゃっている作業は全部iPadでできます。
iPadを「鍵盤数の少ない」というのは少し違うと思います。学校で子供達に何をしてほしいかと言った時に、iPadで十分足りているからです。恐らくWindows推奨なのでしょうが、4.5万円でどれだけのものが購入できるかご存知ですか。わたしもそうですが、大人がビジネスで使うWindows機はcore i5クラスのものです。可能性云々以前の問題だと思います。いくらでもお金が出せるのなら、わたしはWindowsでもよいと思いますよ。
また、起動速度、バッテリーの持ち、堅牢性、代替え機でも自分のアカウントで環境を即時に復元できるなど、生徒一人一台環境で道具として使う事を考えるとChromebookが最適と思います。
それとChromeBookの多くはUSBタイプのコネクタが左右にあり充電保管庫にも収納し易いです。
chromebook、iPadと比べても確かにアカウントやOSアップデートは管理する側としては楽だと思います。OSも二段構造のため、重大な不具合があっても瞬時に復旧できるのは他の2OSにないメリットですね。
HPのコンバーチブル(タッチ可能)タイプのchromebookであれば、少し4.5万円から足が出てしまいますが、チエル社の管理コンソール支援ツールもバンドルされており、非常に魅力的です。
https://www.chieru.co.jp/products/jr-school/ic-console-support/
iPadですとGsuiteを利用する場合にGoogleアカウントの管理も必要となり、二重でユーザ管理が必要となるので、管理側としてはchromebookが一番よいかもしれません。
全生徒にアカウントを配布しているので、どの端末を使っても自分の環境で学習出来るため使い方の自由度が広く先生方は工夫しながら使っているようです。
今年度中に1人1台体制に整備をいますが、問題なのはネットワーク部分になります。
こちらも強化整備しますが、1人1台となるとGsuite等のセッション数によるプロキシの負荷増大(フィルタリングも含めて)の問題やWiFiのAP整備の問題があり、簡単ではありません。
国はネットワーク整備の補助金を削りまくった上で、コロナ対策のため緊急的に1人1台の整備を前倒ししてきましたので、整備する側としては呆れるしかありません。
>全生徒にアカウントを配布しているので、どの端末を使っても自分の環境で学習出来る
お話の通り、これがchromebookの利点だと思います。Gsuite利用の場合、Googleアカウントは必須となり、他の2OSだと二重でアカウント管理するのが管理側にも利用側にも手間だと思います。
>問題なのはネットワーク部分
行政サイドから見ても、教育情報のネットワークは心配です。
都道府県のセキュリティクラウドを通してインターネット接続する場合、行政の負荷だけでも多いのに、教育情報の負荷が加算されると多大な影響が及んでしまいます。よって、児童生徒のネット回線は、セキュリティクラウドを通さない独自の契約をするのが現実的だと思っているところです。
わたしの自治体でも年末くらいまでには工事を完了させるようですが、教育情報の担当は建築系や行政情報の職員とも頻繁に相談していて一気に忙しくなり大変そうです。
もし御担当されてましたら、お体ご自愛ください。